コスタリカの小さな漁村でバカンス中のアメリカ人企業家が桟橋に係留してあるボートに近づいて行った。ボートには大きなカジキマグロが数本入っていた。そのアメリカ人は漁師に尋ねた。「もっと漁をしたら魚がいっぱいとれてたのに」と惜しがったのに対して漁師はこう切り返す「自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だ。余った時間は日が高くなるまでゆっくり寝ていて、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房と一緒に昼寝して、夜になったら友達とワインを飲んで、友達とギターを弾いているのさ。旦那、することがいっぱいあって毎日、けっこう忙しいんだよ」ところがそのアメリカ人の企業家は滔々と話す。「もっと長い時間漁をして魚を売り貯めたお金で漁船を買ってさらに大きく儲けを増やす、やがて会社を大きくして水産加工工場をもち、サンホセに事務所を構え、ロスやNYにも進出しないか。」ここまで聞いて漁師は尋ねる「旦那、そうなるまでにどれくらいかかるんですか?」「15年から20年くらいだな」「で、それからどうなるんで?」「時期が来たら上場する。そして、株を売る。君は億万長者だ」「なるほど。そうなると、どうなるんで?」企業家は得意そうに答えた「そうしたら仕事から引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんと昼寝して過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。どうだい。すばらしいだろう」