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本の街

私の職場は本の街、神田神保町にある。亡くなった父はかつて麻布で書店を営んでいた。就いた職業は違っても私も本に縁のあるこの地で会計事務所を構え、仕事の本に囲まれながら毎日を送っているのだから何とも因縁を感じるものである。「本屋を守れ」という著者の藤原正彦氏は、読書とは国防である、とまで言っている。何故なら幕末から明治にかけて来日した外国人は、多くの町人たちが本屋で立ち読みをしているのに驚いた。当時江戸には800軒、京都にも200軒の本屋があり、江戸末期の日本人の識字率は9割を超えていた。この教養ある人々のいる日本をヨーロッパの国々は植民地化するのを諦めたのだと。また氏はこうも語る。人間は本を読むことで初めて孤立した情報が組織化され知識となり、体験や思索や情緒により知識が組織化され教養になると。若い頃の受験のための読書は目の前の勝負に勝つための戦いが目的であってそもそも教養とは関係のないもの。専門家を目指すならば修羅の如くその道の本にのめり込むこともまた大事だが、人生にとって影響を与える教養のための読書、大人はそういう読書を心がけたいものだ。

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